昭和5年、横浜――。
大戦後、軍国主義の風潮で陰鬱な影を落としたこの国で、異国情緒あふれる横浜は華々しい発展を遂げた。しかしある夜、名門校の女子生徒が大量惨殺されるという衝撃的な事件が発生し、世間の反発が噴出した。
上月エレナはイエヴァ女学院への入学を前に横浜へやって来た。
身寄りのないエレナは、それが自分も知らない「香り」に隠された真実を狙う者たちが用意した騙しの招待状だとは知らず。
その“香り”は“彼ら”を虜にし、狂わせ、正気を失わせる。
秘密はハチミツです。たとえそれが甘い毒だとしても――。
